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January 15, 2012

「科学的思考」のレッスン

戸田山さんの「科学的思考」のレッスンを,しばらく前に読了.著者に直接質問してみようか,などと思っているうちに,時間がたってしまったので,ひとまずメモ.

科学哲学の基本を,あまり術語をつかわずにやさしく解説し,これをどのように原発事故問題などの現実に活かしたらよいか,という提案をしている.「哲学」というと実学の反対語みたいで役にたたなそうだが,そんなことはないということを.戸田山さんらしく,ユーモアも入っていて飽きさせない展開で語っている.「科学的リテラシー」を持った市民が,トランスサイエンスの問題について主体的に判断しなくてはならない,という主張で,そのために「メタ科学」についての知識が必要なのだと.
#術語まるだしで要約するとこう?

著者があとがき書いているが「書き足らないところ」というのは,「では,その主体的な判断方法については,哲学はどのような解決を提案できるのだろうか」というところなのではないかと思う.戸田山さんがどう考えているのか,チャンスがあったら質問してみよう.

以下,つっこみのメモ
・副題が,「学校で教えてくれないサイエンス」だが,私のところでは教えている.ここでガリレオが使っているのは「仮説演繹法」という推論方法です,などという形.学習指導要領に忠実だと,学校教育の「理科」は「自然科学」を教えることが目的ではないので,たしかに従来は「メタ科学」については授業されていない.ただ,いわゆるPISA的学力観では,メタ科学が身についていることをモロに要求されるので,これからは重視されるポイントになると思われる.

・伊勢田さんもつっこんでいるが,p47 地向斜説は,「ある政治的理由により日本では非常に影響力をもった説明」は,泊さんの本が根拠と思われるが,地質学の中心理論が地向斜説だったのは世界中そうだった.1960年頃までの科学の教科書は,外国のものを含めてこれで説明してある.日本でプレートテクトニクスが学校の教科書に登場するのは,当時の文部省教科書調査官のかたの努力で,海外と比較しても遅れているというわけではない.泊さんの本に書いてあるのは地質学の研究者コミュニティの中のできごとである.しかも,「政治的理由」だけではなくて,それと対立する地質学の研究者の中でも強く反対する主導者がいたことも,プレートテクトニクス受容の遅れに大きな影響があったはず.敵の敵は味方という構図があった.

・p91 クーロン力が距離の二乗に反比例するのを見出すのに万有引力と比較するという例を「類推」としている.自分で勉強していく場合,こういう理解になるかも知れないが,物理学的には別の説明になるだろう.中心点から放射したり働いたりする場合,その影響は距離の二乗に反比例するので,万有引力,クーロン力,磁力,あるいは点光源からの明るさなどは全部そうなるからだ.中心から四方八方に広がれば,距離の二乗に反比例する式が立つ.

ちなみに,伊勢田さんの書評はここ.クリティカル・シンキングを講義している人だけあって,細かいところまでつっこむのはさすが.

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