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May 05, 2015

書評 捏造の科学者

 宿題だった,須田桃子さんの,「捏造の科学者 STAP細胞事件」をようやく読了.荷物が多い移動中でも持ち歩けるので,Kindle本に入れてもらったのはありがたかった.
 「パラダイム」という言葉を発明したトーマス・クーンは,元々は物理学を専攻していたが,残念ながら科学のフロンティア研究は体験していなかった.そこで,科学には,パラダイム転換の時期とパラダイムを使って「通常科学」をする時期とがあると考えた.しかし,科学者たるものはフロンティアの研究がしたいし,できればコペルニクスやニュートンのようにその分野の常識をちゃぶだい返しする「パラダイム転換」を狙っているものである.クーンはパラダイム転換期以外では,科学者は「通常科学」というパズル解きをして満足していると考えたが,そんなことをしたい科学者はあまりいない.運やチャンスに恵まれず,結果的に通常科学になってしまっているだけのことである.クーンは,この点の分析を間違ってしまったのだ.科学者が持つ「コペルニクスになりたい」という欲求に潜む危険性を,「パラダイムの悪魔」と命名しておこう.
 STAP細胞問題は,革命的な提案ほど厳しい追試を受ける,ということが分かっていながら,なぜ「捏造の科学者」になってしまったのか,というところが最大の謎だった.近代科学の基本的な方法の一つが,ガリレオの編み出した仮説演繹法で,いかなる仮説も追試という「踏み絵」を踏まなくてはいけない,というのがルールであることは,いかにトレーニング不足の博士号所持者でも分かっているはずだからだ.
 そうした場合,「捏造があっても追試に耐えられる」という予想が仮にあったとすると,
①証明として不十分な点はあるが,ほぼ実現可能で追試での成功確率が高いと見込まれる
②公表した追試条件以外に提唱者のみが知っている要素があり,その部分のデータを捏造によって隠すことで,技術開発上優位に立ちたい
ということが考えられる.
 中学生たちが「スタップ細胞はあります!」という声物真似をするぐらい,STAP問題は若い人たちには周知のこととなっており,実際,中高生から「理科教員としては信じられるのかどうか」ということをしばしば聞かれた.個人的には「STAP細胞作成にはコツがある」という話からして②なのではないかと予想して,質問には「多分,STAP現象というのはあるのだろうが,(その時点ではひどい捏造があったことは報道されていなかったので)証明不十分で世に問うたのが間違いだったのではないか」と答えていた.本書の結論としてはSTAP現象というのは影も形もないということなので,この問題についての私の予想は間違っていた.質問してくれた中高生にはこの場を借りてお詫びしたい.
 本書では,関係者と記者との生のやりとりを読むことができるが,「あるといいなと思った」という述懐が象徴するように,小保方氏を筆頭として,笹井氏,若山氏,および竹市氏などの主人公は,「パラダイムの悪魔」に魅せられてしまったのだ,という印象を持った.須田さんをはじめ,科学部の記者に方たちは,できれば科学ジャーナリストとしてそのあたりの取材をして,結果を公表して頂けると「パラダイムの悪魔」を防ぐための方略のヒントが得られるのではないかと思う.そのためには,まず捏造の真相を明らかにすることだ,という本書の主張は正しいと考えられる.
 須田さんは,早稲田の理系女なので,小保方さんの登場には,卒業生として期待を持たれたことと拝察され,その後の経緯,特に早大の対応については落胆されたことが想像される.私を含めて,OBOGとしては早稲田の建学精神に鑑みて「何やってんだ」と思った人は多いと思う.組織防衛でうじうじ屁理屈をこねるのでは,「学の独立」という建学の精神を守ることはできないだろうから,大隈公もさぞかし怒るであろう.是非,早大の発信を世の中が信じてもらえる体制を構築して欲しい.

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May 04, 2015

長瀞

 連休を利用して,ジオパーク関連の地質画像を撮影に長瀞へ.満月だったので,月光写真に挑戦しようとしたが,20時台の電車に乗らないと,その日のうちに帰りつかないので,月光照明は断念.満月時の長瀞での撮影は,夜半すぎでないと上手くいかないので,現地で泊まるか,車を使わないと無理.しかし,暗くなるのを待つ間,露頭の前でゆっくり文献を読む,というのはよいものだ.
 ICIスポーツで購入した小型ランプはピント合わせでも使えて,良い買い物だった.

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